デトックスとは

   健康法>

デトックスとは

さまざまな体調不良の陰に潜む体内に取り入れてしまった有害物質、特に鉛、水銀、ヒ素、カドミウムのいわゆる4大有害ミネラルを体から追い出すことをデトックスと言います。

 

有害物質がたまりやすい部位は以下のような場所です。
骨・・・水銀、鉛、アルミニウム等
脳・・・アルミニウム、有機水銀等
皮膚・・・アルミニウム等
肝臓・・・水銀、鉛、カドミウム等
腎臓・・・水銀、カドミウム、鉛等
全身・・・ヒ素等

 

もちろん、出来るだけ有害物質の含有量の少ないものを選択して利用することが基本ですので、出来る範囲で配慮していきたいと思います。
しかし、これらの有害ミネラルはあらゆる水や食物に確実に含まれ、完全に排除することは困難です。

 

汚染された水、魚介類は摂取しない。
残留農薬のついた野菜、米、果物は摂取しない。
食品添加物の入った食べ物は利用しない。
排気ガスは吸わない。
タバコの煙りは吸わない。

 

最近は表示内容自体も疑問が多く、何を信じていいのか不安があります。
すべて自分で作ったもので自給自足しようにも水、大気、魚類とかを活用しないわけにはいきません。

 

困ったことですが入ってくるのを防ぐのはある程度まで防衛し、あとはギブアップして、入ったものを出していく、無害化していくのが現実的な健康法の姿です。

 

そのため、デトックスが最近大きな注目を集めています。

 

 

デトックスの方法

有害重金属を排出する体の働きは便、尿、汗、髪、爪の5手段があり、便が75%、次が尿で約20%程度、汗からが3%程度で、最後は1%程度の毛髪からの排出です。

 

汗には体温を下げる目的で汗腺から分泌される汗と、老廃物を排出するための皮脂腺から分泌される汗とがありますが、デトックスに関しては後者の皮脂腺からの汗が重要です。しかし、毛髪と一緒に排出される有害重金属は、その量ももちろんデトックスに貢献していますが、特に重要なことは、体内の重金属の蓄積の度合いを知ることができる検体としてです。
有害重金属の蓄積度合いが正確に分析できる検査方法として毛髪検査は広く用いられています。

 

デトックスの方法と言われるものはいろいろありますが、大部分が上記の人間の体に本来備わっている、排出機能をよりよく働かせる方法で、以下のような項目が一般的です。

 

食生活の改善による方法
ミネラルウォーター、ハーブティの飲用
各種サプリメント、薬剤の摂取
入浴剤を用いた入浴、ゲルマニウム温浴など
イオンデトックス
岩盤浴
マッサージリンパマッサージ、電磁気器具を用いたものを含む)
絶食
キレーション療法を使ったもの。
鍼灸、腎臓・肝臓の刺激で新陳代謝を活発化

有害物質の侵入とその悪影響

1.
残留農薬や魚介類、水道の鉛管、車の排気ガス、たばこ等から体に入ります。
体に入った鉛は腎臓や肝臓に堆積し、脳神経や骨などに悪影響を与えます。
疲労、頭痛、めまい、イライラ、ヒステリー、貧血、動脈硬化などの原因になります。
2.水銀
イタイイタイ病の原因にもなった水銀は魚に蓄積しています。また、歯の治療のアマルガムや魚の蓄積のもともとの水などから体に入ります。
無機水銀は腎臓にたまりやすく、有機水銀は脳内に蓄積しやすい性質を持っています。
有機水銀は無機水銀に比べ毒性が非常に強く、金目ダイやマグロなどの魚介類に多く含まれている。
冷え性、肩コリ、うつ、脱力感、アトピー、腎障害、知覚障害等が代表的症状です。
3.ヒ素昔から暗殺用の薬として知られているヒ素は上流にヒ素鉱山のあるような河川だけでなく魚類や残留農薬の形で体に入ってきます。症状としては肌荒れ、シミ、脱力感、はき気、頭痛、皮膚角化症が慢性的症状として知られています。
急性的には暗殺用とか毒ガスの成分としても使われるくらいですから推して知るべきですが、多数の死者を出した森永ヒ素ミルク中毒事件で粉ミルクにヒ素が混入したことが原因でした。この場合は急性砒素中毒です。
また身近な例として、栄養価の高い、ヒジキにも含まれ、英国では不摂取勧告が出ているようです。
なお、厚生労働省は含有量が少ないため安全としています。
他の栄養素が多く含まれ有用でも副作用的な悪影響がある例になるかもしれません。
4.カドミウム
魚介類、排ガス、たばこの煙、米等の残留農薬などの形で体に入ってきます。

腎臓にたまりやすく、骨粗鬆症、骨折などが腎臓障害の結果としてカルシウムが骨から失われる結果として起こってきます。
その他の症状としては、臭覚の消失、はき気、腹痛、発熱、むくみ等があります。

鉛の毒性に関する知見について

鉛の毒性に関する知見について
1.吸収、分布、代謝、排泄
ヒト及び動物においては、鉛は吸入あるいは経口摂取により吸収され、ヒトにおける経皮吸収はほとんどない。
ヒト及び動物での鉛の消化管からの吸収は、摂取物質の物理化学的特性、栄養状態、摂取した食餌の種類の影響を受ける。
成人においては、食事中の鉛の約10%が吸収され、絶食状態のほうが吸収率が高い。幼児や小児では、塵埃/土壌や塗料片からの吸収率は生物学的利用能に依存して低いが、食事中の鉛は50%が吸収される。
吸収された鉛は、生体内に均一には分布しない。
血液及び軟部組織への速やかな取り込みの後、骨に緩慢に再分布される。
血中及び軟部組織における鉛の半減期は約28〜36 日であるが、各種の骨部分
においてはずっと長い。
生体内貯蔵の鉛の停滞比率は、成人より小児で高い。1)
2.毒性
(1)急性毒性
鉛の実験動物におけるLD50 に関する報告は見られない。
動物での短期間の経口投与による致死的な影響の最低濃度は、塩の違い(酢酸塩、硝酸塩等)による吸収率等の違いに影響を受け、300〜4000mg/kg 体重/日とされている。
(2)血液毒性
造血組織に対する鉛の影響はヘモグロビン合成を減少させる。

子供におけるヘモグロビン濃度低下に関する血中鉛濃度の閾値は40μg/dLとされている1)
(3)知能/行動学的影響
1980 年代の研究により、血中鉛濃度10μg/dL 以上が知性や他の神経発達への有害影響に関連することが判明
進行中の研究により、72 か月未満の乳幼児には、10μg/dL 未満でも有害事象が起こりうることが明らかになりつつある。3)
(4)神経毒性
動物実験では、鉛と神経系機能との因果関係が確認されており、血中鉛濃度11〜15μg/dL において、認識作用の欠損、鉛暴露の中止後の持続が報告されている。
ヒトにおける末梢神経の伝達速度の低下は、血中鉛濃度30μg/dLで起こる。
さらに、感覚運動機能に40μg/dL で障害が発生し、自律神経機能は約35μg/dL で影響を受ける。1)
鉛血中濃度が300μg/dL を超えるような高濃度の暴露を受けた場合、臨床上最も明瞭に観察される影響として脳症が挙げられる。
50〜300μg/dL でも運動機能障害、認知機能等への影響が見られる。2)
(5)腎毒性
作業者に於ける腎疾患リスクは、血中鉛濃度60μg/dLにおいて増加するが、より鋭敏な指標を用いた最近の研究では、さらに低濃度の鉛暴露における腎臓への影響を示唆している。1)
(6)生殖発生毒性
一部の疫学研究(全てではない)では、血中鉛濃度15μg/dL 以上において、早産及び胎児の生育と成熟の一部の指標に用量依存性の感染性が示された。2)
(7)発がん性
発がん性は、国際がん研究機関(IARC)において、1987 年に、ヒトにおける発がん性の証拠は不十分であるが、特定の無機鉛化合物は実験動物において発がん性を示す十分な証拠が入手されている。

総合評価はグループ2B、すなわちヒトにおいて発がんの可能性のある物質と認められた。(1)
齧歯類(ラット)における腎臓腫瘍について、用量10mg/kg 体重/日で発生。
これは、腎臓毒性の発現量でもある。2)
(参考文献)
1) World Health Organization(WHO). Environmental Health Criteria165,
inorganic lead, Geneva(1995)
(国立医薬品食品衛生研究所による日本語抄訳参照
http://www.nihs.go.jp/DCBI/PUBLIST/ehchsg/ehctran/tran3/ehc11/ehc11
.html)
2) World Health Organization(WHO). Safety Evaluation of Certain Food
Additives and Contaminants, WHO Food Additive Series: 44 (prepared by
the 43rd meeting of the Joint FAO/WHO Expert Committee on Food
Additives(JECFA)).(2000)
(http://www.inchem.org/documents/jecfa/jecmono/v44jec12.htm)
3) Surveillance for Elevated Blood Lead Levels Among Children United
States,1997-2001(http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/ss5210

a1.htm)
(参考)
1.JECFAによる暫定週間耐容摂取量について
第41 回の世界食糧農業機関/世界保健機関の食品添加物・食品汚染物質の合
同専門家会議(JECFA)において、暫定週間耐容摂取量(PTWI)として、25μg/kg 体重が勧告された。このレベルは、全ての暴露源からの鉛を対象としており、幼児と小児を含む全てのヒトを保護するべく設定された。これは幼児や小児による3〜4μg/kg 体重の範囲の鉛の一日摂取量を示すモデルに基づいており、血中鉛濃度を増加させるレベルではない。
2.米国に於ける子供の血中鉛濃度低減の取り組みについて
米国疾患管理センター(CDC)においては、1988 年に制定されたThe leadContamination Control Act に基づき、米国内の子供の鉛中毒を削減するための
取り組みを実施している。
CDCは1991 年に、それまでに得られている子供の鉛暴露と有害事象発生の知見から、子供の血中鉛濃度の削減目標を10μg/dL 未満とし、15μg/dL 以上の子供については、個別の介入を推奨した。
その後、2004 年2 月には、子供の鉛中毒防止に関する諮問委員会のワーキン
グループにおいて、子供の血中鉛濃度10μg/dL 未満における健康影響について
知見の整理を行い、@10μg/dL 未満における血中鉛濃度と子供の認知機能には、相反する関連がある、
A直接的な因果関係は確定していないものの、原因となっている可能性が高く、少なくとも否定できないと結論づけた。
ただし、知見には限界があり、10μg/dL 未満の血中鉛濃度と健康影響を直接に検討した研究は比較的少なく、初期の血中鉛濃度や重要な共変因子のデータ
がない研究も多いことに留意すべきとしている。
また、当該知見が整理された後も医学的介入効果の知見の有無や血中鉛濃度の測定精度の問題などから、子供の血中鉛濃度の削減目標(10μg/dL)をさらに下げることはしないとしている。(厚生労働省の資料から)

 

平成19年度 加工食品中の鉛汚染実態調査結果

水銀その他

アルミニュームとアルツハイマー病

1.アルミニウムとは
 アルミニウムは主に合金として容器、建築、電気器具などに使われているほか、医薬品や食品添加物の成分にもなっています。

 

2.アルミニウムの代謝 ヒトは、医薬品や食物および飲料水から微量のアルミニウムを摂取しています。飲食物から摂取されたアルミニウムの99%以上はそのまま排泄されますが、およそ0.1%のアルミニウムが体内に吸収され、主に腎臓を通って尿中に排泄されます。
消化管からの吸収は、pHやアルミニウムの化学形態や共存成分に大きく影響されます。
例えばアルミニウムの吸収はクエン酸の存在下で増加し、シュウ酸、ケイ酸、リン酸の共存で低下します。
 吸収されたアルミニウムは多くが血中でトランスフェリンと結合し、残りはアルブミンなどの低分子に結合しています。
アルミニウムはトランスフェリン受容体を介して細胞内に取り込まれ、脳内にも同様に移行すると考えられます。

 

吸入によってはわずかしか吸収されず、基本的に経皮吸収はされません。
微粒子の吸入は、嗅覚系を介して脳組織に直接移行します。

 

 通常の平均1日摂取量は大人で1-10mgとされています。
 また、医薬品の制酸薬に含まれる水酸化アルミニウムの吸収率は0.01%、ケイ酸アルミニウムは非吸収性とされています。
 これまでのところ、アルミニウムの必須性については証明されていないため、欠乏症はないと考えられています。また、体内での役割についてもよく分かっていません。

 

3.許容摂取量
 JECFA(FAO/WHO Joint Expert Committee on Food Additives; FAO/WHO 合同食品添加物専門家委員会)による、暫定的週間耐容摂取量 (provisional tolerable weekly intake; PTWI)は、7mg/kg体重/週とされており、体重50kgの人で1日あたり50mgとなります。
 ただし、腎機能に障害がある人や、排泄機能が完成していない乳児では、体内に蓄積しやすい傾向があるので注意が必要です。
 また、水道水の水質基準が0.2mg/L以下と設定されていますが、これは健康への観点から設定されている項目ではなく、味や濁りを生じないという観点から設定された基準と考えられます。

 

4.アルミニウムとアルツハイマー病
 アルツハイマー病患者の脳にアルミニウムが蓄積していたこと、飲料水中のアルミニウム濃度が高い地域においてアルツハイマー病発症率が高かったこと、透析痴呆の患者の脳のアルミニウム含量が高かったことなどから、アルミニウムがアルツハイマー病の原因ではないかという説があります。
 しかしながら、飲料水中のアルミニウム濃度とアルツハイマー病や記憶力に関連性は見られないという報告もあり、疫学調査においても見解は一致しません。
 現在では、アルミニウムの摂取とアルツハイマー病の関連性を否定する説も出ています。

 

今のところ、ヒトで見られるアルツハイマー病とアルミニウムの関連性を明らかにした科学的根拠は見当たりません。

 

 アルツハイマー病の発症とアルミニウムには、何らかの関係がある可能性は否定できませんが、今のところ、アルミニウムの摂取が原因でアルツハイマー病が発症するとは言えません。

 

5.アルミニウム製品の使用について
 アルミニウム製の調理器具や容器等の使用により、アルミニウムの摂取量が増大し、アルツハイマー病になるというような情報も流れているようですが、アルミニウム器具からの食物への溶出はわずかです。
アルミニウム溶出量について、次のような報告があります。
 1)加熱調理をすべてアルミニウム製鍋でおこなった場合に調理器具から1.68mg、アルミ箔製品から0.01mg、飲料缶0.02mg摂取すると推定されている。
 2)酸や食塩が強い食品ではアルミニウム容器からの溶出が比較的大きいが、全ての食品がアルミニウム容器で調理・保存されても、容器由来のアルミニウム摂取量は6mg/日程度であるので、暫定的週間耐容摂取量PTWI(7mg/kg体重/週)と比較して非常に低い(PMID:8885317)。
 以上の報告からも分かるように、アルミニウム器具からの溶出に対して過度に心配する必要はありません。

 

 ドイツBfRからの報告でも、市販アルミニウム製品からのアルミニウム摂取量は、食品や制酸剤(水酸化アルミニウムやケイ酸アルミニウム)から摂取するアルミニウム量よりも少なく、毒性を示す量よりも明らかに少ないことが示されています。
したがって、市販アルミニウム製品の使用による健康への影響はないと考えられます。ただし、アルミニウムは酸性条件下で溶解性が高くなるため、酸や塩濃度の高い食品(リンゴをすりつぶしたものやトマトピューレ、塩漬けニシンなど)にはアルミ製の容器やアルミホイルを使用しないことを勧めています。

 

6.まとめ
 アルツハイマー病の原因には遺伝的素因のほかに、様々な環境因子の影響が考えられていますが、まだ不明な点が多く、話題になっているアルミニウム摂取との因果関係についてもよく分かっていません。
どうしても気になる方は、上記に示す通り、酸や塩濃度の高い食品を保存する際、アルミニウム製品の使用を避けることにより、アルミニウムの食品へ溶出量および摂取量を低減できます。

砒素の生体影響

環境性砒素の生体影響
「岩手県立大学盛岡短期大学部生活科学科」 千葉 啓子
 砒素は単体や化合物など様々な形態で自然環境中を循環し、生物圏では食物連鎖によってヒトの体内にも取り込まれる。環境中に高濃度の砒素汚染が存在すると肺、口、皮膚を介して、摂取された砒素が体内に濃縮される。取り込まれた砒素の化学形態、暴露量、暴露期間の違いによって様々な健康障害が発生する。無機砒素は発癌物質でもあり、中毒の場合と違って、微量の暴露でも細胞のDNA傷害を引き起こすことがあるので、これらの様々な生体影響を明確にしたうえで砒素の健康影響評価を確立する必要がある。また、日本人は欧米人に比較して魚貝類や海藻類などの食品に由来する砒素の摂取が多いことから、砒素の健康影響評価において食物を介して経口摂取される砒素量の安全性をどのように評価するかも、また重要かつ早急に解決すべき課題である。

 

 本報告は環境水や食品中砒素の化学形態別の濃度や摂取量を明らかにし、それらの体内蓄積や排泄パターンの解析を通して砒素の生体影響の解明を目的とした研究の一端を紹介するものである。砒素に関するこれまでの知見をもとに、海産物を多食する食習慣をもつ人々の砒素摂取状況の把握とその生体影響を検討した。また、東北北部で一部の井戸水、温泉水、鉱山廃水から高濃度の五価の無機砒素が検出されているので、今回の調査では砒素を成分として含む温泉地に居住し、この温泉水を長期間、日常的に利用している人々を対象に砒素の体内蓄積などの生体影響、飲泉習慣の有無についても検討した。このような日常生活中の砒素暴露、言い換えれば潜在的な砒素暴露の実態と生体影響の関係についてはほとんど研究されておらず、本研究においてこれらの点が解明できれば意義深いと考える。

 

 岩手県南の沿岸地域に位置し、ウニやアワビ、ワカメ・コンブの養殖漁業を基幹産業としている地域住民を対象にした調査から、食生活において海産物に依存する割合が高く、魚貝類および小魚類の1日摂取量の平均は151±86g、海藻類は4±7gで、魚貝・小魚については日本人の一般的な摂取量に比較して2〜3倍以上であった。対象者の尿中から4形態の砒素が検出された。尿中砒素濃度は全ての化学形態で全国248名の値に比較して極めて高値を示し、とくにDNA濃度とTMA濃度が有意に高く、5〜6倍の値を示した対象者が多かった。これまでの研究で尿中TMAは魚貝類として摂取されたアルセノベタインそのものであることが明らかにされていること、さらに食事調査でも同対象者群では魚貝類摂取量が極めて多いことが尿中砒素の解析結果を裏付けていると考える。

 

 一方、岩手・秋田両県の湯治場として古くから利用されている温泉地に居住する人々を対象とした調査では、この温泉水は岩手県衛生研究所の『県内の温泉に関する調査』によると砒素含有量は県内の温泉の中では比較的高く、測定年度により多少変動はみられるものの、定期検査では0.3〜0.5mg/kgの砒素が検出されている。今回の測定においても0.5mg/kg前後であった。対象者は共同温泉か、源泉湧出口から直接自宅浴槽に温泉水をひいて入浴し、洗濯などの生活水として温泉水を使用しているが、飲泉習慣があると回答した対象者はいなかった。対象者の尿からは4形態の砒素が検出され、尿中砒素の化学形態や量に温泉水中の砒素の影響と考えられる現象は認められなかった。

 

 次に毛髪中砒素の化学形態別濃度を検討した。海産物多食者および温泉水利用者の毛髪からはiAs、DMAの2形態の砒素が検出された。生体試料中砒素に関する既存の報告では、一般的にMAとTMAは毛髪からは検出されていない。海産物多食者群のiAs、DMAとも対照群の値に比較してやや高い傾向にあった。毛髪は砒素の排泄経路あるいは蓄積器官と考えられているが、今回のように、魚貝類など砒素が多く含まれる食品を多食する習慣がTMAの体内蓄積をもたらすのではないかという点が懸念された。過剰なTMAが体内蓄積するか否かは日本人にとって食物由来の砒素の安全性を考えていく上で重要な意味をもつ。

 

 今回男女とも尿中に大量に検出されたTMAは毛髪からは検出されず、毛髪中砒素の化学形態に関する従来の知見と一致していたことから、TMAは多量摂取しても残留性が少なく、体内蓄積されないことが示唆された。尿中砒素濃度、とくにTMA濃度と毛髪中砒素濃度との相関関係について検討したが、尿中TMA濃度は毛髪中のいずれの形態の砒素濃度とも関連は認められず、TMAに残留性がないことが支持された。本研究から得られた成果は飲食物を介した経口的砒素暴露レベルの重要な知見となるものと考える。一方、温泉水利用者の毛髪から検出された2形態の砒素のうち、iAs濃度は男女とも海産物多食者、都市部居住者の値に比較して最も高く、有意に高値を示した。また、女に比べて男で高かった。しかし、温泉利用者では尿中iAs濃度にほとんど変動は認められず、毛髪中砒素が単独で上昇した理由として、飲泉などによる経口摂取からの毛髪への蓄積ではなく、温泉水中に含まれていたiAsが毛髪に外部付着した可能性が強いと推測される。我々の生活環境中に様々な形態で存在する砒素が食事、入浴などの生活習慣のなかで潜在的に生体に暴露されている実態の一部が明らかにされた。