ぼけない方法

  

アルツハイマー病にならない方法

試して合点から抜粋
まとめ・アルツハイマー病予防の3原則

有酸素運動をする
話し相手を持つ
生活習慣病にならない食生活

 

「発見!これが原因物質!?」
アルツハイマー病の患者さんの脳を顕微鏡で見てみると、茶色いシミのようなものがたくさんあります。これは「β(ベータ)タンパク」という物質が溜まったものです。βタンパクは、脳の神経細胞が作るいわば「ゴミ」のようなもので、現在アルツハイマー病の主な原因と考えられています。

 

通常、βタンパクは脳の中にある酵素などが掃除してくれますが、ある要因でこの酵素が減ってしまうと、脳の中にどんどんたまってしまうのです。その要因とは、なんと「加齢」。ということは、だれでも年をとるとアルツハイマー病からは逃れられないのでしょうか?

 

※βタンパクがたまっても、すぐアルツハイマー病を発症するわけではありません。
※アルツハイマー病の原因には多くの仮説があり、いまだ確定していません。しかし現在、βタンパクを主な原因とする説が世界中の学会で主流であり、治療薬の開発もこの説に基づいて行われています。

 

「アルツハイマー病の症状とは」
βタンパクによって、どんな症状が起きるのでしょうか。

 

78歳のAさんは、今年の3月にアルツハイマー病との診断を受けました。まず「日付を忘れ、しかも直前に家族に日付を聞いたことも忘れてしまう」など、記憶障害が起きました。その後、パジャマで外出し、しかも家族がそれを止めようとすると怒り出すなど、不思議な行動を頻繁にとるようになりました。

 

しかしAさんにお話しを伺ってみると、会話は普通にできる上、病気についてもちゃんと自覚しているのです。

 

アルツハイマー病の患者さんでは、ふだんは異常が感じられないのに、突然「かゆみ止めの軟膏だと思って足に接着剤を塗ってしまう」など、普通では考えられないような行動をとる場合があります。なぜ、こんなことが起きるのでしょうか?

 

脳では何が起きているのか
脳は場所によって役割が分かれています。たとえば、「記憶を担当する」場所、「見たものが何であるかなどを分析する」場所、それらの情報を総合して「何をするか決定する」場所、などです。

 

アルツハイマー病にかかると、蓄積したβタンパクによって脳がダメージを受けます。ただし、脳には、βタンパクによる影響を受けやすい場所と、受けにくい場所があると考えられています。

 

まず影響を受けるのは、記憶を司る海馬(かいば)の周辺です。そのため、アルツハイマー病の最初の症状として、まず記憶障害が起きることが多いのです。

 

その後、影響は脳の後ろ側に広がっていきます。ここは、「見たものが何であるか」を分析するなどの働きがあるため、そうした働きが衰えてきます。

 

その一方で、「行動の決定」や「会話」などを主に担当する脳の前の部分は、病気がある程度進行するまでβタンパクの影響を受けにくい傾向があります。

 

そのため、「会話では異常を感じない」にもかかわらず、「普段なら見間違えるはずのないものを見間違えてしまう」などということが起きるのです。

 

※アルツハイマー病の症状には個人差があります。必ず上のように進行するわけではありません。

 

「常識逆転!NOプロブレム」
βタンパクが脳にたまり始めてからこのような症状が出るまで、およそ20年かかると考えられています。その間に、何か予防の手だてをとることができないのでしょうか?

 

83歳のBさんは、3年前に受けた脳の検査で異常が見つかりました。脳の写真を見た結果、同年代の人に比べて海馬の部分がが大幅に縮んでしまっていることがわかったのです。専門家に伺うと、「明らかにアルツハイマー病の疑いがある」と言います。

 

しかし本人はというと、日常生活に問題ないばかりか、病院で記憶力などを調べるテストを受けた結果は満点! 実は最近、脳の写真を見るとアルツハイマー病が強く疑われるのに、全く問題なく暮している人がたくさん見つかっているのです。

 

Bさんに症状が出ていない理由は、はっきりとはわかっていません。しかしBさんにお話を伺ってみると、実はこのあとで紹介する3つの予防術を全て守っていたことがわかりました。そのことが、発病を食い止めている可能性があると考えられるのです。

 

予防術その1 ◎ 3倍なりにくくする予防術
「有酸素運動をする」
アメリカで3年前に行われた実験で、「運動しやすい環境に置かれたマウスは、βタンパクがたまりにくい」という結果が示されました。運動によって、脳でβタンパクを分解する酵素が活性化したと考えられています。

 

 

 

「運動」がアルツハイマー病を予防する効果があることは、大規模な調査でも明らかにされています。たとえば、ヨーロッパで3年前に行われた調査では、1449人を20年にわたって追跡した結果、適度な運動をしている人は、していない人よりも、アルツハイマー病の危険度がおよそ3分の1になっていることが明らかになりました。

 

なお、予防効果が見られたのは、1回20分以上の、ちょっと汗ばむ程度の運動(有酸素運動)を週に2回以上行っている人たちでした。

 

予防に効果!「○○○手を持つ」
島根県にある認知症のデイケアでは、患者さん自身の気持ちを知るために手記を書いてもらっています。手記には、病気がまだ軽いうちから周りの人に話しかけてもらえなくなり、孤独を抱える患者さんの思いが記されていました。

 

実は専門家によると、会話が減るとアルツハイマー病が進行してしまうことがあるというのです。そこで、会話をしているときの脳を調べると、とても活性化していることがわかりました。

 

予防術その2 ◎ 8倍なりにくくする予防術
「話し相手を持つ」
8年前にヨーロッパで発表された研究によると、1203人を3年間追跡した結果、家族や友達が多く社会的接触が多い人に比べ、乏しい人は認知症の発症率がおよそ8倍でした。

 

その理由として、会話をすることによって脳が活性化し、アルツハイマー病になるのを抑える効果があったのではないかと考えられています。

 

予防術その3 ◎ 6倍なりにくくする予防術
「生活習慣病にならない食生活」
ヨーロッパで3年前に発表された、1449人を20年に渡って追跡した研究によると、以下の項目があるとアルツハイマー病を中心とした認知症の危険度が増すことがわかりました。

 

高血圧
危険度1.97倍
高コレステロール
危険度1.89倍
肥満
危険度2.09倍

 

上の3つすべてにあてはまる場合
危険度6.21倍

 

 

なぜこのような結果になったのか、理由はまだ完全にはわかっていません。しかし、これらの状態は脳への血流に影響を与えたり、βタンパクを溜まりやすくしたりすることによって、アルツハイマー病になりやすくするのではないかと考えられています。

 

「漢方で朗報!家族に笑顔が戻った」
続いては「薬」に関する最新情報です。

 

アルツハイマー病の患者さんに起きることがある、妄想(もうそう)や徘徊(はいかい)などの症状は、「周辺症状(もしくはBPSD)」と呼ばれています。これらは介護する家族にとっても、大きな問題になります。実は最近、この周辺症状を抑える漢方薬が見つかりました!

 

3年前に日本の研究者が発表した研究で、漢方薬の「抑肝散(よくかんさん)」に、妄想や興奮などの周辺症状を抑える効果が確認されました。2週間〜1ヶ月飲み続けると効果が出てくると言います。

 

薬を飲んだ患者さんのご家族に話を伺うと、患者さんの気持ちが落ち着き、笑顔も増えるようになったといいます。それによって、会話など家族とのコミュニケーションもとれるようになってきたというのです。

 

【抑肝散に関する注意】
抑肝散は「処方薬」です。処方を受けたい場合、お近くの医療機関にご相談下さい。
抑肝散の効果には個人差があり、全ての患者さんに効果を示すわけではありません。
処方を受けられるかどうか、また保険が適用されるかどうかなどは、患者さんの症状によって異なります。医師の指示に従って下さい。
専門家の解説
βタンパクがたまり始める時期には個人差があり、40代で20人に1人程度、50代で20人に3人程度、70代で半分程度の人にたまり始めると考えられています。

 

しかしβタンパクがたまっても、今回番組で紹介した予防の3原則「有酸素運動」「話し相手」「生活習慣病にならない食生活」を守っていれば、発病するまでの期間をぐっと遅らせることができるらしいことがわかってきました。アルツハイマー病にならないようにすることは可能なのです。

 

脳の鍛え方

人のほとんど全ての器官は、『使わなければ、使えなくなってしまう』性質を持っており、このことを廃用性萎縮(はいようせいいしゅく)と言います。
逆に、しっかり使えば人の体の器官は発達することになります。
この廃用性萎縮は骨格や筋肉をはじめとした、肉体を構成する器官、機能に止まらず、それらをコントロールする心、精神に関しても当てはまります。

 

脳の健康で活発に活動することは、言いかえればやる気が出ている状態です。
この脳を活発に活動させるには、こつがあります。

 

それは、前頭葉の中心溝の後にある「体性感覚野」は、手や足など身体の動きを情報としてとらえ、その「体性感覚野」を起点に、脳のほかの部分が活性化されるということです。

 

すなわち、「体性感覚野」をしっかり働かせることが重要だということです。

 

その「体性感覚野」に届く運動情報は、足からが25%、手からが25%、口を含むあご部からが50%で、もっとも刺激を与えているのが、あご部です。
歯や歯茎、唇、アゴ、舌、咽頭などの刺激が「体性感覚野」に与える刺激の約半分を占めています。

 

半分を占めていると言ってもイメージがわかないかもしれません。

 

これを分かりやすく表しているのがペンフィールドのホムンクルスです。
カナダの脳外科医ペンフィールドはてんかん患者の手術部位の決定に際し、ヒトの大脳皮質を電気刺激し、運動野や体性感覚野と体部位との対応関係をまとめました。
図は、ペンフィールドとボルドレイが彼らのデータに基づいて描いた「こびと」(ホムンクルス)です。
健康,健康法,健康生活,アルツハイマー,ぼけ
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これらの図では、ホムンクルスの体の各部分の大きさは、大脳皮質で、骨格筋に随意運動の命令を出す領域である運動野の相当領域の面積に対応するように描かれています。
その結果、体の形は相当ゆがんでおり、例えば、親指は大きく長く、顔や舌も異常に大きく表されています。

 

これらの図で大きな部分をうまく刺激してやると効率的に脳を活性化できることになります。

 

例えばものを咬むというのが健康に良いと昔から言われていますが、納得できる気がします。
もう少し噛むことについて具体的にみると噛むことを実現する、骨格筋に随意運動の命令を出す過程では、感覚のフィードバックが欠かせません。
『産業教育機器システム便覧』によると、五官による知覚の割合は視覚器官が83%、聴覚が11%、臭覚3.5%、触覚1.5%、最後の味覚が1.0%、であるとしています。
「食べる(噛む)」という行為は、人間の五感(視・聴・嗅・味・触)を全て刺激する動作です。
つまり幅広い情報が脳に伝わり、大脳の広い範囲を興奮させることができるのです。
さらに、よく噛むことは脳への血流を増やします。

 

 

噛むことのもう一つの効能として、コレシストキニンというホルモンを消化管から分泌することがあります。
このホルモンは海馬を刺激して記憶と学習能力を高める働きをします。

 

 

そのほか指が大きく描かれていますので、指を使う楽器演奏とか、指の運動とかもすぐ思い浮かぶ脳の健康法になります。

 

口とか喉とかも大きいですので、カラオケなどもお勧めです。

薬で若返る高齢アカゲザルの脳

薬で若返る高齢アカゲザルの脳 Christine Dell'Amore
for National Geographic News

 

July 29, 2011

 

 

 近い将来、脳を若返らせる薬が誕生するかもしれない。高齢のアカゲザルにある種の化学物質を投与した結果、脳内のニューロン(神経細胞)の活動が若い頃のように再び活発化したという。この化学物質は、年齢とともにニューロンの「発火」を遅らせる脳内分子を阻害する効果がある。

 

 

 研究チームのリーダーでアメリカ、イェール大学の神経生物学者エイミー・アーンステン氏は、「高齢化に伴う認知機能低下の生理学的メカニズムを解明する第一歩だ」と話す。「脳の衰えは避けられないと思っていたが、今回の結果には希望がある。脳内の神経化学的な環境を変化させれば、認知機能の一部が回復する可能性がある」。

 

◆年齢とともに衰える脳内の“クリップボード”

 

 脳内の前頭前皮質は、高齢化とともに急速に衰え始める。

 

 前頭前皮質はさまざまな高次機能をつかさどる部位で、作動記憶(ワーキングメモリー)の維持も含まれる。作動記憶とは、行動に結びついた刺激がない情報を、“心のクリップボード”に格納する機能を指す。

 

 若い脳は作動記憶を脳内に維持するように、前頭前皮質の各ニューロンが互いに活性化する。「この関係が成立するには、脳内の神経化学的な環境を適切なバランスに保つ必要がある」とアーンステン氏は述べる。

 

 しかし、人は40〜50代に達すると、前頭前皮質に「cAMP(環状アデノシン一リン酸)」というシグナル伝達分子が過剰に蓄積され始める。その影響で、ニューロンの効果的な活性化が阻害され、物忘れや注意力散漫などが生じるようになる。

 

◆記憶するサル

 

 アーンステン氏の研究チームは、いろいろな年齢の6匹のアカゲザルを数年間訓練して、単純なテレビゲームの操作方法を教えた。対象のゲームを覚えるには作動記憶を活用する必要がある。

 

 操作方法を身に付けたサルの脳内に、痛みのない方法で小さなファイバーを挿入、単一ニューロンの活性化状況を記録した。生きている高齢の動物にこの処置が行われたのは初めてである。

 

 若いサルは刺激のないときでも活性化が頻繁だったが、高齢のサルでは、刺激がないとニューロンの活動があまりみられなかった。

 

 次に、挿入したファイバーを通して化学物質「グアンファシン」を含む薬を高齢のサルに注入したところ、cAMPの伝達経路がブロックされ、ニューロンの活動が活性化した。

 

◆薬の効果?

 

 グアンファシンは現在、成人向け高血圧治療薬の成分として利用されている。また、高齢者の作動記憶を改善する効果の有無を確認する臨床試験も実施されている。

 

 アーンステン氏は、「グアンファシンがサルの作動記憶を改善することはすでに判明している。サルや人間で繰り返し実験し、同じ結果が得られた」と説明する。「ただし、この薬が“脳の活性剤”として承認されても、記憶の改善がどの程度実現するかはまだ断言できない。“30代に戻れます”などと言い切ることは不可能だ」。

 

 今回の研究に対しては、暫定的との意見が多い。カリフォルニア大学アーバイン校の学習・記憶神経生物学センターに所属する神経科学者ジェームズ・L・マゴー氏は、次のようにコメントした。「ニューロン活動の回復が記憶の改善をもたらすとは必ずしも証明されていない。薬を脳に直接注入する方法は初めてだが、すぐに臨床に応用できる段階ではない」。

 

 カリフォルニア大学サンディエゴ校でアルツハイマー病共同研究(ADCS)プロジェクトを率いる神経科学者ポール・アイゼン氏も同様に、「新たな前進であることは間違いないが、人間の治療にどのような意味を持つのかは明らかではない。“実験対象がサルだから”ではなく、単一細胞記録は脳機能の一部にすぎないからだ」と述べる。

 

◆そもそも脳の活性剤は必要か?

 

「そもそも根本的な問題として、高齢化に伴う記憶能力低下に対する薬物治療が必要なのか結論が出ていない」とアイゼン氏は語る。「アルツハイマー病などでなければ、記憶能力が低下しても、十分に埋め合わせできる。例えば、物忘れには単純に“メモを取る”方法が有効な場合もある」。

 

 一方、研究チームのリーダー、アーンステン氏は、「認知機能低下との戦いは、健康な数多くの高齢者にとって極めて重要な問題だ」と主張する。「財産管理や健康維持、なにより自立した生活を送るために認知機能は欠かせない」。

 

 

 

脳の伝達が速いことは、IQの高さと関係している

ケンブリッジ大学の精神医学教授エド・ブルモアは、脳の画像を使って、脳細胞が行っているネットワークの効率を測定しています。そこでわかったのは、賢い人ほど脳の情報伝達が速く、そうでない人ほど遅いということでした。結果を踏まえて「脳の伝達が速いことは、IQの高さと関係しているようです。

ボケないためには運動が重要です。

老化した脳でも外的刺激で神経細胞の産出機能が増加
2011/08/10
「学習」と「記憶」の能力を司る脳内の「海馬」は神経幹細胞が存在し、大人になっても新しい神経細胞17 件が絶えず作られているが、老化に伴い海馬の神経幹細胞の数は減少し、同時に多様な神経細胞群を生み出す能力も減衰していくが、産業技術総合研究所(産総研)などの研究チームは、海馬で神経細胞の最下層を形成している細胞(アストロサイト細胞)が老化した脳内でも運動などの生体の外から与える刺激により、分泌型のたんぱく質の1つで、細胞運命の調節や様々な発生、発がんなどに関わっているとされている情報伝達17 件(シグナル伝達)に使われる「Wnt3」の産生量を増加させ、それにより神経新生機能を向上させることを突き止めた。

 

同成果は、産業技術総合研究所(産総研)の浅島誠フェローと同幹細胞工学研究センター 幹細胞制御研究チームの桑原知子研究員は、筑波大学 人間総合科学研究科の征矢英昭教授らによるもので、実験生物学に関する米国の科学誌「FASEB Journal」に掲載された。

 

人間の脳内にある海馬では、生涯にわたり新しい神経細胞が産み出されている(神経新生)が、その頻度は年齢とともに減少し、ストレスや疾患など個人がおかれた環境によっても大きく変化する。アルツハイマー病、認知症、うつ病などの神経変性疾患や精神疾患では、海馬の神経新生現象がさらに顕著に低下するが、これは海馬の神経新生現象が、外的刺激や個人の生体環境によって容易に変化し得る分子メカニズムで調節されていることを示しており、この「外的刺激」には、海馬での新しい神経細胞のネットワーク形成を増加させるもの(例えば、運動、玩具を配置するなどの豊かな生育環境作りなど)もあれば、減少させるもの(例えば、ストレス、疾患、老化など)もあり、それらに応答して数多くの遺伝子の発現様式が多様に変化することが分かってきていた。

 

産総研では、脳内にある神経幹細胞を解析し、アルツハイマー病やうつ病の医療・創薬開発に役立てる研究を行ってきており、これまでにアストロサイト細胞の産生するWnt3が神経新生の起点になること、すなわちWnt3のシグナル伝達17 件によって、神経分化に必要となるNeuroD1遺伝子や、神経細胞17 件の多様化を産み出すレトロトランスポゾンの遺伝子が活性化することを見出していた

 

老齢マウスの海馬と若齢マウスの海馬から「アストロサイト細胞」をそれぞれ樹立・培養すると、老齢マウスの海馬「アストロサイト細胞」培養系では、若齢マウスの海馬「アストロサイト細胞」に比べるとWnt3産生能力が30分の1程度と大幅に減少していることが判明した。

 

 

若齢マウスの海馬より抽出し、培養したアストロサイト細胞(左)。老齢マウスの海馬より抽出・培養したアストロサイト細胞(右)。アストロサイト細胞のマーカーであるGFAP(緑:抗体染色)はどちらも同様に発現している。若齢マウスの海馬アストロサイト細胞(左)からは、Wnt3(赤:抗体染色)が盛んに産生されているが、老齢マウスの海馬アストロサイト細胞(右)からは、Wnt3の分泌がほとんど観察されない

 

 

さらに、老齢マウス群に、ストレスを感じさせない程度の運動(ランニング)を短期間行わせると、海馬アストロサイト細胞のWnt3産生能が大幅に増加したことが確認され、この分泌されたWnt3の増加に伴って、それを受け取る神経幹細胞内の神経分化に必要な遺伝子が活性化され、神経新生機能が増すこと、すなわち海馬で新しく産み出される神経細胞17 件の数が増加することが判明した。

 

海馬で新しく神経細胞が作られる過程には、「神経細胞17 件の多様性(特異性の獲得)」を引き起こすメカニズムが備わっている。海馬の多様な神経細胞では、同じ神経特異的遺伝子でも、それぞれ微妙に異なった発現プロファイルを持っており、海馬の細胞内で発現する各遺伝子の量を調節するクロマチン制御では、他の細胞と異なり、ゲノムのノンコーディング領域に含まれるレトロトランスポゾンが、様々な遺伝子の近くで活性化されることでクロマチン制御に違いが生じ、それにより神経細胞17 件の多様性が産みださえるという特長がある。この仕組みが、運動(ランニング)といった個体への刺激で、どのように変化するのか調べた結果、新しく産まれた神経細胞内のレトロトランスポゾンのクロマチン制御の状態が、アストロサイト細胞が産生するWnt3の量に、敏感に依存していることが判明した。

 

 

個体の情報を神経幹細胞へ伝える因子(Wnt3:オレンジ)。神経幹細胞内の遺伝子発現や、神経細胞17 件の多様性を産み出す分子メカニズム自体は変わらないが、アストロサイト細胞のWnt3産生能は個体の状態に大きく依存する

 

 

これまで、老化により脳内で新しい神経が作られなくなるのは、元となる「神経幹細胞」の数が減ってしまうことが第一の原因と考えられきたが、今回の結果は、「神経幹細胞」ではなくアストロサイト細胞に神経新生を大きく左右する因子があり、それが「神経幹細胞」の若返りにもつながる役割を持っていることを明らかにしたものとなる。

 

脳内の神経新生を上昇させる外的刺激(運動)と、減少させる状況(老化、疾患)との双方の変化に即して、広範なゲノム応答をオン/オフする分子機構が見つかってきたことは、今後の神経・精神疾患の創薬・医療への新たなアプローチの基盤となる知見が確かめられたと考えられると研究チームでは説明しており、老化や様々な神経疾患の状態を左右する、幹細胞の周囲の細胞の役割を今後さらに解析し、診断に有効な新しい分子マーカーの検出方法を探索する予定とするほか、幹細胞自体を操作しなくても、幹細胞を支えている細胞群の活性化を促すような創薬開発や新規医療技術の開発など、今後の多様な産業に応用させていければ、としている。